香ばしく焼かれた秋刀魚…その横に、
ちょこん、と添えられたグリーンの実。
炭火で焼かれた、松茸に、
爽やかな果汁を、ひと搾り。
秋が近づくと、よくテレビなどで目にする、
思わずヨダレが出そうな、光景ですよね。
秋刀魚や松茸など、秋の味覚と、
相性抜群の柑橘類、と言えば、
「すだち」です。
このすだち、徳島県が日本一の生産量を誇り、
なんと、全国シェアほぼ100%!
今回は、すだちの産地・徳島県で聞いた、
すだちに隠された「秘密」を、
解き明かしてみましょう。
すだちってどんな植物?
すだちは日本原産、というより、
徳島県が原産の、柑橘類です。
ですから学名も、そのまま、
「Citrus(柑橘類) sudachi」と表記します。
実の大きさは、直径3~4㎝ほど、
ゴルフボール大のものが標準です。
熟すと、皮が黄色くなりますが、
出荷されるのは、皮が濃い緑色の、
未熟な実です。
よく同じ色の、かぼすと混同されますが、
かぼすは、5~7cmと、すだちよりも、
ひと回り、大きい実です。
なぜ徳島県が生産量日本一なの?
徳島県の中でも特に栽培が盛んで、上質のすだちが、
出荷されているのは、県の北東部です。
一年中温暖で、しかも日照時間と雨量のバランス、
時期がすだちの栽培に、ぴったりなのです。
枝と葉を伸ばす夏に、たっぷり雨水を吸い上げ、
実をつける時期には、燦々と太陽の光を浴び、
香り高く、上質なすだちが育つのです。
徳島原産で、ほぼ徳島でしか栽培されないすだちは、
県のシンボルとしても、使われています。
徳島の「県の花」もすだちの花。
徳島県庁を訪れると、駐車場付近の並木や庭に、
すだちの木が、たくさん植えられています。
徳島県とすだちの繋がりを、示すものの中で、
最古とされる文献は、なんと「古事記」!
古事記には、田道間守(たぢまもり)という人物が、
天皇の命で、「素晴らしい芳香を放つ果実」を求め、
海の向こうの「常世(とこよ)の国」に渡った、
という記録があります。
現在の研究では、この果実こそが、
すだちの原種である、と言われています。
つまり常世の国、とは、徳島のことを指す、
という伝説が、地元で語り継がれています。
徳島の人たちは、地元が原産であるすだちに、
並々ならぬ愛情を、注いでいるのですね。
すだちの特徴と使い方は?
すだちは、みかんやオレンジのように、実を食べるのではなく、
皮の香りや、果汁の酸味を楽しむ柑橘類で、
「香酸柑橘類」と呼ばれる、分類に入ります。
酸味の強さから、かつては食酢として使われ、
「酢橘(すたちばな)」の名が、付きました。
すだち、という名称は「すたちばな」が、
省略されたもの、と言われています。
同じ仲間にゆず、かぼすがありますが、
スダチはその中でも、果汁に甘さがなく、
キリリとした酸味と、香りが特徴です。
すだちの香りと酸味は、魚や肉の脂を、
さっぱりとした後口にしてくれます。
また、松茸や白身魚など、淡白な味のものと、
合わせると、素材の持つ甘みを引き立て、
さらなる、旨味も引き出します。
徳島県のすだちのCMを見ると、
さまざまな料理に、すだちが使われているのが、
よくわかります。
こちらのCMがなんとも、お腹の空くCMで…
思わず、画面に鼻を近づけて、
すだちの香りを、嗅ぎたくなります(笑)。
徳島県で生まれ育った、すだちは、
古来から多くの人に、愛されてきました。
しかし決して、自己主張は強くなく、
秋の味覚の引き立て役、名脇役でもあります。
そんな謙虚なすだちに、今年は敬意をこめて、
ぎゅっ!とひと搾り、してあげましょう♪
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