左利きと右利きでは寿命が違う?その理由を徹底検証

いつもダイエットに四苦八苦の、会社の若手女子社員M子ちゃんが、最近やたらと甘いものを食べるようになりました。あれ、どーしちゃったの?ダイエットを諦めたの?

「いいんです!どうせ早死にするから、もう好きな物を我慢するのはヤメたんです!」

早死に?どこから見ても、そんな薄幸な人には見えないんですけど…?

「だって私、左利きですから!知ってますか?左利きって66歳までしか生きられないんですって!66なんて、定年から1年後には死んじゃうってことですよね?それなら、せいぜい生きてるうちに、好きなもの食べまくらなきゃ!」

冗談かな?と思いましたが、どうも彼女の目がマジなので、笑うわけにもいかず…。いったいどこでそんな珍妙なことを耳にしたんでしょうね。気になったので、チョイと調べてみることにしました。

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なぜ左利きの寿命は短いのか?

右利きに比べて左利きの方が寿命が短い、という説は、1991年Halpern & Corenが発表した論文によるものです。

南カリフォルニアの住人を無作為に抽出して平均値を出したところ、右利きの平均寿命75歳に対し、左利きの平均寿命が66歳と、なんと、9年もの差が出たのだそうです。

この説はイギリスの権威ある医学雑誌に掲載され、あっという間に大きな話題となりました。日本でもバラエティ番組などで紹介されたことがあるので、覚えている人もいるかと思います。

さて、この衝撃的な左利き短命説ですが、その主な原因は、世界人口の1割強にしかすぎない左利きの人口比にあるのだとか。

世の中は数の上で圧倒的に勝る右利き社会のため、あらゆるものが右利きを前提として作られています。

身近なところでは、包丁やハサミなどの道具、電子レンジやパソコンなどの電気製品、自動車やバイク、自転車などの乗物類、駅の改札やエレベーターなどのインフラ設備、等々。

これらはすべて、右手を使うことを前提とした構造であるため、左手が利き腕の人にとっては、物理的にも感覚的にも大変不利なことは、言うまでもありません。

こうして左利きが何かと不便を強いられる結果、機械や自動車などの誤作動による事故に遭遇したり、またストレスを抱えることで精神疾患などにかかる確率が高くなり、それが右利きより短い平均寿命に反映されている、ということなのだそうです。

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左利きは本当に短命なのか?

なるほど。統計結果をもとに検証されると、もっともな説のような気がしますね。しかしながら、このHalpern & Corenの学説は、すでに統計結果の誤読が指摘され、いま現在では根拠が薄弱だ、とされています。

この統計の元となった調査は、1991年時点での死亡事例987件について、死亡時の年齢、および故人の利き腕が右か左かを確認したものなのですが、このサンプリングそのものに問題があったのです。

それはなぜか。そこには前時代に左利きが矯正されてきた、という歴史的事実が全く考慮されていないからです。

今でこそ左利き市民権(というと大げさですが、要するに特別奇異なことではない、という社会的認識ですね)を得ていますが、近世までは忌むべきこと、とみなされ、幼児のうちから右利きへ厳しく矯正されてきました。

例えば、カソリックでは左手は禁忌で悪魔の手、とされてきましたし、日本でも左利きは長い間、身体的不具である、と考えられていました。

しかし近代に入り、それらが根拠のない迷信や俗説である、ということが社会的に認識されるようになり、さらに左利きは先天的なもののため無理に矯正するのは問題がある、という医学的見地から、矯正の習慣は徐々になくなっていきます。

つまり、Halpern & Corenが調査を行った1991年時点では、高齢者に左利きを矯正された右利きが存在している可能性があるわけです。これでは正確な統計数値とは言えません。

従って、左利きの寿命が短い、という説には何の根拠もない、ということになるんですね。左利きの人は、ちょっと安心したんじゃないでしょうか。

おわりに

そんなわけで、M子ちゃんには、大丈夫、あなたは健康で能天気だからきっと長生きするよ、と説明しておきました。彼女もなんとなくホッとしたようです。

「でも左利きストレス溜まるってのは、ホントなんですよねー。だから私、ケースバイケースで右手を使ってるんです。パソコンのマウスとか、スマホとか。あ、お箸も右かな」

用途によって利き腕を使い分けるM子ちゃんのような人を、「クロスドミナンス」と言うのですが、ストレスとは無縁に見えるマイペースのM子ちゃんでも、やはり右利き社会での生活は、不便を感じるようです。それなりに対応して生活しているんですね。

でも考えてみればこれは利き腕に限らず、日常のさまざまなことにクロスドミナンスで臨んだほうが、柔軟に生きていけるのかなあ、などと思ったりもするのでした。

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