歌舞伎揚げの由来って?お煎餅なのに歌舞伎って何!

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「お母さん!」

小学5年の夕子が、キッチンに来て
何やら私に、報告があるようです。

 
夕子「茶の間で、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが
   ポリポリ、いい音をたてて
   お煎餅を食べてるみたい?

   ほら、が赤と黒と緑いろのヤツよ!」

 
私「あぁ、“歌舞伎揚げ”のことね。
  お母さんもあのお煎餅、大好き!
  子供のころから食べていたわよー。」

 
夕子「“歌舞伎揚げ”っていうの?

   でも、歌舞伎って、お祖父ちゃんと
   お祖母ちゃんが大好きっていう
   お芝居のことでしょう?

   どうして、“歌舞伎揚げ”って言うの。」

 
私「そうね。お母さんも良く知らないわ。
  じゃあ、夕子ちゃん。二人の所にお邪魔して、
  歌舞伎揚げの由来とか、

  いろいろ聞いて、ついでにお煎餅も、
  御馳走になりましょう!」

夕子「はい、了解しました。
   それでは夕子、情報収集
   行ってまいります。」

 
夕子ちゃんは、気取って敬礼
その姿に、くすっと笑ってしまいました。
   

歌舞伎とお煎餅の二つの伝統を融合して生まれた「歌舞伎揚げ」

祖母「あら、夕子ちゃん。お帰りなさい。
   ここに座って、おせんべい
   一緒に食べましょう?」

 
夕子「えっ、いいの?
   じゃ、お言葉に甘えて
   お邪魔しよっと。

   お祖父ちゃん!このおせんべい“歌舞伎揚げ
   っていうんじゃない?
   なぜ、こんな名前で呼ばれているの?」
   
 
祖父「おっ、早速夕子ちゃんの
   なぜなぜが始まったな。(笑い)

   じゃあ、お祖父ちゃんがうん蓄を一つ。

   歌舞伎の語源は「傾(かぶ)く」と言ってね。
   江戸時代に大成した、
   日本の代表的な演劇なんだよ。

   17世紀の初め頃から、
   歌舞伎のルーツと言われる、かぶき踊りが、
   町民たちの人気となってね。

   それから芝居、踊り、音楽の要素を取り入れた
   総合芸術にまで、高まっていったんだね。

   一方で、沢山あるお菓子の中でも、せんべいは、
   庶民の食べ物として、昔から親しまれてきた、
   日本特有のお菓子!なんだ。

 
   そこで、この両方の伝統文化
   伝えようとして、お菓子屋さんが
   考え出したものだよ。

   せんべいの包装袋に、
   歌舞伎で使われる、定式幕の模様を取り入れて、
   パッケージにしたこととか、

   せんべいの一枚一枚にも
   歌舞伎の家紋を、刻印したりして、
   『歌舞伎揚』と呼ぶようになったんだよ。

 
   因みに、四角い歌舞伎揚は
   市川団十郎家の家紋「三枡」。

   丸い方は、片岡仁左衛門家の家紋
   「七ツ割に二引」だそうだ。

   以前は、お煎餅も仕上がりが堅いので、
   家紋の焼き印も、良く見えていたんだけど。

   現在の“歌舞伎揚げ”は、柔らかく焼き上げているので、
   特徴である家紋の形が、見えにくくなった、
   というのも、時代の変化みたいで面白いね。」

 
私「結論から言うと、
  歌舞伎とせんべいは、直接、関連がないけど、
  お菓子屋さんの、思いが詰まったお煎餅だということね。」

 
お話を聞いていた、私も、
途中参加することになりました。

私「でも、お煎餅に家紋が
  刻印されていたとはね。

  私も今まで、たくさん“歌舞伎揚げ”を
  食べてきたけど、全然気づかなかったわよ。」

 
夕子「ホントだ!よく見ると、
   ぼんやりだけど、あるある。」

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歌舞伎のシンボル定式幕の配色の意味って?

夕子「お祖父ちゃん。歌舞伎の定式幕って
   何のことなの?」

 
祖父「そうか。夕子ちゃんは
   まだ、歌舞伎に親しんでないから
   少し、難しいかな?

   ここに解説本があるから、かいつまんで
   読んで聞かせようかね。ゴッホン!

   歌舞伎の伝統を残す
   代表的な引き幕のことを、
   定式幕と言います。と、書いてあるよ。

   定式幕の色柄は、
   誰もが「歌舞伎」と、連想できるほどでね、
   歌舞伎のシンボルなんだ。

   一番代表的な配色は
   「萌葱・柿・黒」の三色で構成されていて、
   江戸時代からの、格式ある幕なんだね。

   いかに格式が、あるかというと、
   引き幕は、江戸幕府認定の、各座以外、
   使用禁止だったそうだよ。

 
   定式幕の三色の配列は、
   江戸三座と呼ばれた中村座
   森田座市村座によって、違うんだね。

   中村座の定式幕は「黒・白・柿」。

   森田座「黒・柿・萌葱(もえぎ)=濃い緑色」の流れ
   をくむのが歌舞伎座 で、他に松竹座、南座、
   博多座 、国立文楽劇場などに使われているようだ。

   国立劇場は、市村座の様式を取り入れた、
   「黒・萌葱・柿」の配色だから、
   歌舞伎座とは色の配列が違うものだね。

   浅草公会堂や 新歌舞伎座 、日本橋劇場など
   も市村座の様式に入るんだそうだ。」

 
私「なるほど、そうすると、“歌舞伎揚げ”のパッケージは
  色調が、濃いめなんだけど
  新歌舞伎座の配色と同じ、市村座のものなのね。

  そう言えば、似たようなパッケージに、
  “おにぎりせんべい”というのが、あるけれど、

  絵柄に、黒色がなくて、萌葱と柿色の配色だから、
  歌舞伎とは、全然関係ない、お煎餅ってことになるわよね。」

 
夕子「ふーん、造ってるお菓子屋さんが、
   違うってことか!
   似て非なるもの、ってことよね。

   勉強になりますぅ~!!」

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   お祖母ちゃん!お祖母ちゃん!食べてばかりいないで、
   お祖父ちゃんみたいな、 
   お煎餅のうん蓄について、なんかなぁ~い?

 
  

関東の歌舞伎揚げ!VS 関西のぼんち揚げ!

祖母「世の中に、米菓煎餅がたくさん、
   出回っているけど、大阪みやげ
   いただいたお煎餅も、おいしかったわね。

   確か“ぼんち揚げ”って、言ってたかしらね。

   原材料は、どちらもよく似てるみたいだけど、
   ぼんち揚げは、関西だけあって
   「だし」に、こだわりがあるんだって。

   かつおだし粉末と、昆布だしで、
   ほんのり甘い、淡口醤油の味付け
   なってるみたいよ。

 
   揚げ煎餅は、色でも分かるって、
   とこかしら。

   “歌舞伎揚げ”は、濃い口醤油でしょ。

   関西と関東の違いがはっきりと
   出てて、分かりやすいわね。

   それから、どちらのお煎餅も
   1960年からの発売、というのには
   驚かされましたよ。

   それほど昔から、皆さんに親しまれてきた
   味だったのね。」

 

終わりに

夕子ちゃんのお母さんが
「歌舞伎揚げ」の製造元
調べたところによると・・・。

昭和28年創業
東京世田谷の甘納豆屋さん。

夏場の閑散期、近くにあった揚げ煎餅の
工場の煙りと、人々が美味しそうに、
食べている光景を見て、米菓に転換したそうです。

 
終戦後のことですから、
当初は一斗缶で、出荷して店頭で、ばら売り。

現在のように、食べやすい個別包装
なったのは、30~40年くらい前から、
と言います。

 
ほんのり甘口のしょうゆ味
米油で、サラッと揚げて、
ぱりぱりとした歯ごたえ、

いつまでも愛される
庶民的な味には、歌舞伎と同じように、
それ相応の歴史が、あったのです。

夕子ちゃん!
歌舞伎揚げ」のお陰で、
歌舞伎にも目覚め、お煎餅も
ますます、好きになったようですね。

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