先週末、マンションのお隣の部屋の
Aさん夫婦が、引っ越して
いかれました。
3年前、お隣に引っ越して
来られて以来、
歳が近かったこともあり、
家族ぐるみでの、お付き合いを
していたので、なんだか急に
寂しくなりました。
そんなAさんが、引っ越し前に
心配していたのが、
マンション退去時の、修繕費用が
いくらかかるのか、ということ。
気になって、念のためチェック
してみると、玄関の壁のクロスに、
1箇所不注意で、つけてしまった
剥がれが、あったけれども、
その他に目立つ傷や、汚れはなかったそう。
それを聞いた私も、それくらいなら
大したことは、なさそうだと
思っていたのですが、
引越しの翌日、Aさんから
電話が掛かってきて、意外な事実を
聞かされました。
A「実はね、引越しの日に家具を
運び出したら、
冷蔵庫の後ろ壁のクロスに、うっすらと
電気ヤケの黒ずみが、出来ていたの。
おまけに、和室の壁クロスや畳が
日焼けして、家具を置いていた跡が
ハッキリ分かるくらい、変色していたの。
大家さんの代理人が来て、内装の汚れや
傷み具合を、チェックしてもらった時に、
玄関のクロスの、剥がれについては
自己申告を、したんだけど、
一体どれくらい、請求されるのかしら…。
引越しで、お金がいくらあっても
足りないって、いうときに
本当に、イヤになっちゃうわ。」
賃貸住宅を、引き払う際に、
家主さんに、請求される
『原状回復費用』。
入居時に預けていた、敷金から
差し引いて、支払われる
ものなのですが、
敷金が帰ってきた、という声を聞く反面、
膨大な請求を受けた、という
人の話も聞くと、
一体どれだけ請求が、くるのか
気が気じゃない、ですよね。
実は私も、前のマンションを引っ越すときに、
この問題で、失敗したことがあるので、
他人事とは、思えません。
私「うんうん、分かるよ。
実際、賃貸契約のトラブルで多いのが、
退去する際の、傷や汚れは
入居者と大家さんの、どちらの負担か
という、原状回復に関すること
なんだそうよ。
でもね実は、退去時の費用負担には、
一定のルールが、あるの。」
A「えっ、そうなの!?
どんなルールなの?」
私「その前にまず、賃貸住宅を
退去する時には、
借主(かりぬし)には、
『原状回復義務』が、あるってことは
知っているわよね。」
原状回復義務とは
私「部屋や建物の借主が、契約終了時に
借りていた物を、
『契約締結時の状態』に戻して
貸主に返還すべき、義務のことを
いうの。
借主はこの、原状回復という義務を
民法上負っている、ことになるの。
そのため、クリーニング費用や、
修繕費用なんかを、貸主(かしぬし)から
請求されると、いう訳なの。」
A「え~っ!『契約締結時の状態』って!?
ウチが入居したとき、クロスも畳も
ほぼ新品だったけど!?
同じ状態にして返すって、
有り得なくない?」
私「ああ、心配しないで。
賃貸借でいう『原状回復』って、
入居時の状態に、戻すって
いうことじゃないの。
当然、年月の経過による劣化もあるし、
普通に生活をしていれば、ある程度の傷みが
発生するのは、当然のことよね。
実は、こういう痛みのことを
『経年劣化(けいねんれっか)』・
『通常損耗(つうじょうそんもう)』といって、
通常、貸主が負担することに
なっているの。」
A「それホント!?
ぶっちゃけ、助かるけど、
実際部屋を、使っていたのは、
自分達なのに、ナンで
大家さんが、負担してくれるの?」
私「この通常の使用によって、生じる程度の
損耗や(通常損耗)、
時間の経過に伴って、生じる損耗
(経年劣化)っていうのは、
人に部屋を、貸したとしても、
大家さん自身が、使用したとしても、
普通に発生する、ものだから、
部屋を所有していれば、当然かかる
費用な訳よね。
だから大家さんの、負担としているわけ。
逆に、借主の責任によって生じた
汚れや傷、
故障や不具合を、借主が放置したことで
発生・拡大してしまった、
汚れや傷、については
借主の費用で、修復する必要が
あるとされているのよ。」
A「ふ~ん。そうなんだ。
でも、その経年劣化・通常損耗って
一体どこまで、含まれるの?
やっぱ、冷蔵庫の電気ヤケは
ヤバイんだよね…。」(◞‸◟)ハァー
私「実は、国土交通省が
『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf)
で例をあげて、説明しているの。
その中の、原状回復は貸主と借主の
どちらが負担すべきかの、主な例を
挙げてみるわね。」
貸主(大家さん)が負担すべきもの
【普通の使い方をしていて、
時間とともに、消耗するもの】
・日照等による、クロス・畳の変色、
フローリングの色落ち
・家具の設置による床、カーペットの
へこみ、設置跡
・テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の
黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
・画鋲やピンなど、クロスの上だけに残った跡
【次の入居者のための、化粧直しやグレードアップ】
・専門業者による、ハウスクリーニング
・特に破損していない、畳の裏返し・表替え
・フローリングワックスがけ
・トイレや台所の消毒
借主(入居者)が負担すべきもの
【故意・過失や、不適切な使い方による汚れや傷】
・引越し作業で生じた、ひっかき傷
・雨の吹込みによる、畳や
フローリングの色落ち
・落書き等の、故意による毀損
・飼育ペットによる、柱等の傷・臭い
・タバコのヤニ・臭いによる、クロスの汚れ
(但しクリーニングで、除去できない場合)
・下地材の張り替えが、必要なほどの
釘穴・ネジ穴
・壁紙の張り替え、許可のないリフォーム
【不具合を放置したことで、発生・拡大した汚れや傷】
・結露を放置したために、拡大したシミ・カビ
・カーペットに飲み物等を
こぼしたことによる、シミ・カビ
・冷蔵庫下の、サビ跡
・通常の掃除で、除去できないほどの
台所の油汚れ
・風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等
・エアコンからの水漏れを、
放置したために、腐食した壁
A「わぁ~!ということは、
畳やクロスの、日焼けや、
冷蔵庫の、電気ヤケのクロスも
大家さん持ちって、いうことよね!
私、掃除は結構、コマめに
やっていたから、
クリーニングも、必要ないはず。
後は、玄関の剥げたクロスの
張り替えだけって、
言うことだよね。」 (๑˃̵ᴗ˂̵)و ヨシ!
私「おっと、喜ぶのはまだ早い!
ガイドラインがあっても、
クリーニング代や、畳の張り替え費用を
請求される、場合もあるのよ。」
A「えっ、どうして?」
私「ガイドラインは、法律じゃないから、
強制力は、ないの。
あくまで、賃貸契約をするときには、
こんなガイドラインが、あるから
参考にして下さい、というものにしか
すぎないのよ。
だから、場合によっては
賃貸借契約の中に、『特約』という形で、
ガイドラインでは、貸主が負担すると
されているものでも、借主の負担と
なっている、可能性もあるのよ。」
A「マジ~!?
特約って、どこに書いて
あったのよ~?」
特約があった場合
私「賃貸借契約書の最後に、文字通り
『特約事項』と、書いてあったり、
『明渡し』の条項の、中に書かれていたり、
特約条項って、色々な書き方が
あるんだけど、
特約がある場合、大抵は原則以上の負担を
借主側に求める、内容になっている
ことが多いの。
よくあるのは、クリーニング代、
畳表替え・カーペットの張り替え費用なんかを
借主負担とするもの。
実は、特約っていうのは、
借主が『負担してもいい』と、意思表示
している場合に、成立するものなんだけど、
契約書に、特に何も言わずに署名・捺印
してしまった場合、
借主は、その内容について、
納得して同意したと、いうことに
なってしまうの。」
A「賃貸借契約書って、細かい字でゴチャゴチャ
書いてあって、ちゃんと読んでなかったわ…。
ど~しよ~。」 _| ̄|○ガックリ…
私「ごめん。チョッと、脅かしすぎた。
実は、ウチのマンション、
ハウスクリーニング代以外、
特約は、ついていないから、
そんなに、心配しないで。
実は私、前のマンションで
畳の表替えが、特約に入っていたのに
気付かなくって、
退去時に、一枚5000円×8枚=40,000円も
請求されてたから、今回のマンションでは
気を付けてたのよ。
本当は、クリーニング代も付けたく
なかったんだけど、特約がないところが
ほとんど、なくってね~。
ハウスクリーニング代は、大体
25,000~50,000円が、相場みたいよ。」
A「あ~っ、地獄に仏っていう気分。」(○≧∇≦)⊃゚復活!
私「喜んでいるのはいいけど、
クロスの、張り替え費用については
注意したほうが、いいわよ。」
クロス張り替えの範囲は?
私「『原状回復』の本来の意味の、
『元の状態に、戻すこと』って
ことから考えれば、
費用の負担は、破損部分を
補修するのに必要な、『最小単位』で
いいはずよね。
だけど、私の知人は
『クロスを一部だけ、張り替えると、
他の古い部分と、色が違ってしまうから、
部屋中のクロスを、張り替える費用を
負担して下さい。』と、
大家さんから、言われたそうなの。」
A「えっ、マジ~で~?
それって、普通なの?」
私「ううん。そんなことないのよ。
破損した部分の、最小単位、
つまり、クロス1枚(約2㎡)を、
借主が費用を負担して、原状回復した場合、
そのまわりのクロスを、色合わせのために
交換をする、というのは、
経年劣化によって、色が褪せたものを
新しいものに、交換する行為だと、
考えられるわよね。
『経年劣化は、貸主が負担』が原則。
つまり色合わせで、交換をした部分については、
貸主の負担と、考えていいと思うわよ。
それから、クロスの費用には、
経年劣化も、考慮されるの。
実はクロスは、耐用年数6年で
価値は、1円になるの。
Aさんは、3年前の入居時、クロスは
新品に張り替えて、あったって
ことだよね?
そうなると、経過年数による、
借主の負担割合は、50%になるから、
クロス工事が、1000~1500円/㎡で
発注できたとすると
(クロス単価 1000~1500円 × 広さ 2㎡ )× 経年劣化50%
= 1000~1500円
となるわね。
ただし、ガイドラインでも
㎡単位で、張り替えを行うと、
クロスの色が、異なったりするため
逆に物件の価値を、下げてしまい
賃貸人への負担が、大きくなる
こともあるとして、
『面単位』での精算を、賃借人負担としても
やむを得ない場合もある、としているのは
考慮しておく、必要があるわね。
いずれ大家さんから、原状回復見積書が
届くと思うけど、納得のいく見積りじゃ
ない場合は、
国土交通省のガイドラインや、
過去の判例など、根拠となるものを、
持って交渉した方が、いいわよ。
ただし、さっきも言ったように、
ガイドラインは、法律ではなく、
あくまで目安。
聞き入れて、もらえるかどうかは、
大家さん次第と、考えるしかないわね。」
まとめ
ここまで、借りる側の立場から
なるべく支払いを、抑えたいという
方向から、考えてきましたが
実際これが、自分の家だったらと思うと、
傷を付けたり、汚したりというのは
とても気を遣う、ものだろうと思います。
賃貸住宅に住む、ということは、
正に大家さんの、大切な資産である
家を、お借りしているのだ、
ということを、肝に銘じて、
自分の家と同じように、大切に住むことが
大切なんじゃないかと、改めて感じる
いい機会になりました。
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