先日、娘が学校の宿題のレポートを、
書いていたので、ちらっと内容を覗いてみると、
高校生のネットいじめの、
ニュースに関して、
「自分の身の回りでは、
今のところ、そのような実態は
認められないが、
決して他山の石とせず、そういったことが
起きないように、注意してネットを
利用するようにしたい」という内容であった。
ムム。何か違和感があるぞ。
「他山の石とせず」っていう言い方したっけ?
早速ネットで、確認してみました。
「他山の石」の意味とは?
「他山の石」(たざんのいし)とは、
「よその山から出た、つまらない石。
転じて、自分の修養の助けとなる
他人の誤った言行。」という意味。
元々は、中国最古の詩集である「詩経」の中の
「他山之石、可以攻玉。」
(たざんのいしもってたまをおさむべし)
という言葉からきており、
「よその山から出た粗悪な石も、
自分の玉を、磨くのに利用できる」という意味であり、
そこから、他人のつまらない言行も、
自分の人格を作るための、
反省材料とすることができる
という比喩に、用いられるようになった
とのことです。
使用例としては、次のようなもの。
・A社の不祥事を、他山の石として、
自社の経営の、透明化を図る。
・彼の自己中心的言動を、他山の石とすべきだ。
本来、他人の悪い例を見て、自分を正すという
戒めの言葉ですので、
尊敬の気持ちを、表すつもりで、
「先生の生き方を、他山の石として
卒業後も、頑張っていきます。」
なんて言ってしまうと、
凄くまずいことに、なってしまいますね。
調べているうちに、そもそも、この「他山の石」は
間違った意味で、使われるケースが増えている
慣用句の1つなのだという事が、分かってきました。
「他山の石」の誤用
文化庁では、日本語の特徴であり、かつ
用法が、特に難しいとされる
敬語を中心とした言葉遣い、
あるいは、慣用句・熟語などの誤用が
多数派になっていくことを、捉えた
「国語に関する世論調査」を、毎年実施しています。
そのなかで、「世間ずれ」「やぶさかでない」
「まんじりともせず」など、
本来とは違う意味に、とられやすい
慣用句についての調査が、なされているのですが、
「他山の石」も、そのうちの一つです。
この中で「他人の言行」を、
どのように、受け取っているか
調べているのですが、
平成25年度の調査では、
・「他人の誤った言行」・・・30.8%
・「他人の良い言行」・・・・22.6%
・「分からない」・・・・・・35.9%
という結果でした。
「なんと、
『他人の誤った言行も、自分の行いの参考となる』
と本来の意味を、正しく理解している人は
約30%しか、いないんです。
しかも、言葉そのものの意味が
『分からない』を選んだ人が、約36%も!」
ところで、「他山の石」の本来の意味を、
確認したところで、お気付きのように、
「悪い面をお手本にする」という
四字熟語の「反面教師」と、
ほぼ同じ意味になります。
反面教師とは
元は中国の毛沢東により、発案された言葉で、
「悪い面の見本で、それを見ると
そうなってはいけないと、
教えられる人や事例のこと。
それを見ることで、
反省の材料となるような、人や事例。」
という意味で使用します。
(物事の)反対側、裏側、逆の面を表す「反面」と
人を教育する「教師」を、組み合わせ
良い行いや、模範となるお手本を、示すことにより
教育するのではなく、
「そうしてはいけない」という
反対の面(悪いお手本)も、人を教育するのに、
役立つという意味の、「反面教師」。
「○○(人・物事)を反面教師とした」などと、
言い切って終わる形より、
何を悪い例と考えたのか、という説明をつける
使い方が、一般的だと思います。
「勉強をサボって、大学入試に失敗した兄を
反面教師として、一生懸命受験勉強した。」
などですね。
又、ほぼ同じ意味を持つことわざに
「人のふり見て我がふり直せ」が、あります。
この言葉は、文字を眺めただけで、その内容が
一目瞭然に、理解できるのでは
ないでしょうか?
一方、「反面教師」は、どうでしょう。
このことわざに比べれば、
多少硬い表現のように、感じますが、
漢字のまだ読めない、子供は別として、
字面から、何となくイメージが
湧いてきそうな、気がします。
少なくとも、「反面」という文字は
褒め言葉とは、感じにくいのでは
ないでしょうか?
それに対し、「他山の石」の場合、
それだけでは、「よその山の石」という
意味しかありませんから、
何らかの前提知識がなければ、
理解することが、難しいと思われます。
この言葉は、文章の中でこそ、
目にすることは、ありますが
普段の日常会話では、
ほとんど、使用することがない
言葉ではないかと、思われます。
話し言葉で聞くことも、
なくはないのですが、
演説や対談、目上の人との会話などの
改まった場面くらいでしか、
耳にする機会が、ないように思います。
意味が分からないから、
日常生活で、使われなくなり、
使われなくなったことで、
益々、意味が分からなくなり、
本来とは違う
「他人の良い言行は、自分の行いの手本となる」
と解釈する人や、
「分からない」という人が、
増えているのかも、しれません。
終わりに
娘の間違い「他山の石とせず」は、
文化庁が調べている誤用例とは違う使い方で、
文章の流れから考えると、
「他人ごと」のような意味に
使っていると、思われます。
今回、インターネットで検索してみると、
「他山の石とせず」で、
多数のヒットが、ありました。
中には「他山の石とせず」の言い方が、
間違いであると、指摘しているものもあり、
やはり、一定の割合でこのような誤用も、
見られるのだろうと、思われます。
「他山の石」。単純には語れない言葉である
と感じました。
取り敢えず、娘には「他山の石」の
正しい意味を、教えてやり、
「他山の石とせず」ではなく、
「他山の石として」が、
正しい使い方だと、言っておかないとね。
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