卒業シーズンが終わり、先輩達を見送ったら、
次は自分たちの番。
この時期、進路に頭を抱えている高校生も
多いことでしょう。
我が家の娘も、先輩や友達と進路について
話しているうちに、色々と心が揺れてきた様子。
「地元の大学では、希望の学科がない。
東京の大学に行って、
大好きな英語を、もう少し本格的に勉強したい。」
と相談してきました。
「そんなこと言っても、
東京で、一人暮らししようと思ったら
どれだけお金が掛かると、思っているの。
来年は、弟も高校に入学するんだからムリよ。」
「ウチから仕送りしてもらわなくても、大丈夫。
奨学金っていうのがあるんだって、
先輩から、教えてもらったんだ。
それとアルバイトを頑張れば、
お母さん達に、迷惑はかけないよ。」
あーあ、全くウチの娘ときたら、
すぐ感化されるんだから。
「Aちゃん(娘のこと)、
奨学金ってどんなものか、分かっているの?
将来、あなたが返さなくっちゃならない
借金なのよ。」
「えーっ?!借金!?」
娘は、目を白黒させています。
「奨学金といっても、色々種類があるし、
返さなくって、良いものもあるけど、
そういう奨学金は、受ける条件がとっても厳しいの。」
奨学金の種類
奨学金には、2種類あります。
・給付奨学金
返済の必要がない、奨学金のことです。
給付奨学金は、自治体や企業が
主宰となっていることが多いです。
・貸与奨学金
卒業後に返済義務のある、奨学金です。
無利子のものと、有利子のものがあります。
この貸与型の奨学金制度の中で、
最も利用者の多いものが、
国が運営している「日本学生支援機構奨学金」です。
(http://www.jasso.go.jp/saiyou/daigaku.html)
「あっ!先輩が受けている奨学金も、これだ。」
「大学生、短大生の約3割が、利用している
最もメジャーな、奨学金制度といわれているわ。
Aちゃんが利用するとしたら、
この奨学金になると思うから、
これについて、説明するね。」
日本学生支援機構の奨学金制度
第一種奨学金と、第二種奨学金があり、
成績と家庭の収入に、条件があります。
第一種奨学金
・無利子貸与
・学力基準
大学進学前の申し込みの場合(=予約採用)、
申込時までの、高校の成績の平均が
5段階評価の3.5以上(採用は審査による)。
・奨学金月額
進学先(国・公立か、私立か)と、
通学形態(自宅通学か、自宅外通学か)によって、
月々の奨学金の金額が、変わります。
(30,000円~64,000円)
・家計基準
(予約採用・世帯収入の上限の目安、4人家族の場合)
給与所得者 収入781万円
それ以外 所得349万円
第二種奨学金
・有利子貸与
年利3%が上限。在学中は無利子。
・学力基準
高校の成績が、平均水準以上や、
学修に意欲があり、学業を確実に修了できる
見込みがあると、認められるなど。
・奨学金月額
月額3万、5万、8万、10万、12万円から選択可能。
・家計基準
(予約採用・世帯収入の上限の目安、4人家族の場合)
給与所得者 収入1,124万円
それ以外 所得 692万円
第一種奨学金は、採用枠が少ないため、
基準を満たしていても、
採用されないケースが、あります。
又、私立大学や、専門学校へ進学する場合、
第一種奨学金の金額では、賄えないケースも
多いようです。
第一種奨学金と、第二種奨学金の貸与を
併せて受けることも、できます。
「Aちゃんの場合、学力的にも
第二種奨学金に、なりそうね。
次に、一人暮らしには
どれくらいお金が掛かるか、
考えてみようね。」
一人暮らしにかかるお金
まず、毎月の生活費・学費について
考えてみます。
毎月掛かる費用
(独)日本学生支援機構の
「平成24年度学生生活調査について」をみると、
下宿、アパート、その他に住んでいる学生の
年間平均支出額は、2,185,100円となっています。
これを、アルバイトと奨学金で、賄う訳です。
まず、年間平均支出額を、月当たりに換算すると
2,185,100円÷12ヶ月≒182,100円
これが1ヶ月当たり、生活費と学費に掛かる費用です。
例えば奨学金を、月10万円受けるとして、
182,100円-100,000円=82,100円
残りをアルバイトで、稼ぐことになります。
時給800円として、考えると
82,100円÷800円≒102時間
月に102時間、1ヶ月4週間として、
週約26時間、働く必要があります。
土日に8時間、平日週2日5時間、
くらいになります。
「これは、あくまで平均の
生活費と学費だから、
もっと高くなる可能性も、あるでしょう?
こんなにアルバイトしていては、
とても、まともに勉強できるとは
思えないわよ。
それとね、一人暮らしをするためには、
毎月の費用のほかに、
引越しや敷金などの、初期費用も必要よ。」
一人暮らしの初期費用
1.部屋を借りるために、必要なお金
地域や物件によって、異なりますが、
敷金・礼金各2ヶ月分、
仲介手数料1ヶ月分、
前払い家賃1ヶ月分として、
合計で家賃の6ヶ月分は、用意する必要があると、
考えるのが、一般的です。
その他、火災保険料や鍵の交換費が
必要になる場合も、あります。
2.引越しに必要なお金
家族や友人の協力を借りて、引越をすれば
レンタカー代程度で済みますが、
引越し業者に依頼すると、
荷物の量や、距離によりますが、
3~7万円程度は、かかります。
3.生活必需品に必要なお金
家具や家電、キッチン用品。
その他にカーテン、照明、寝具、調理器具や食器、
バス・トイレ用品等が必要になります。
「少なくとも50万円くらいには、なりそうね。
それと、気をつけないといけないのは、
奨学金は、高校在学中に申請しても、
初回の振込みは、4~5月だから、
これらの初期費用や、大学の入学金、
前期の授業料には、間に合わないのよ。」
「えー。何だか完璧に、ムリって言う感じだー。」
「まあ。もう少し話を聞きなさい。
奨学金は借金だって、言ったでしょ?
返済のことも、
ちゃんと確認しておかないと、ダメよ。」
奨学金の返還方法
大学卒業後に、金融機関の口座(=リレー口座)から、
毎月一定の日に、自動的に引き落とされます。
第二種奨学金の利息は、在学中は加算されません。
利率は、固定方式と、5年毎に見直す方式を選べます。
どちらも、貸与が終了した時点の利率で、
計算され、上限は3%。
「Aちゃんが、4年間、毎月10万円借りた
とするでしょう?
貸与総額は、480万円ね。
仮に、年利1%で計算すると、
返還総額は5,321,420円。
これを240回(20年)で
22,172円ずつ、毎月返還していくのよ。
卒業してから、20年だからストレートにいって
42歳まで、返済していくことになるわね。」
「ぐっ。42歳っ!!」
「もちろん、繰上げ返済もできるわよ。
でも、逆にAちゃんが卒業する頃の、
就職状況が、どうなっているか
誰にも保証できないのよ。
大学を出ても、就職できない可能性だって
ゼロじゃないでしょ?
災害、傷病、経済困難、失業などの
返還困難な事情が、生じた場合は、
返還期限の猶予を、願い出ることができるけど、
その分返済し終わるのは、遅くなるわ。」
娘はすっかり、しょげ返っています。
終わりに
少し脅かしすぎたかも、しれない。
本当のことを言うと、娘のことを
ちょっと見直していた。
どうしてもヤリたいこと、勉強したいことが、
見つかるって言うのは、とっても貴重なこと。
「大学によっては、優秀な学生を獲得するために、
入学試験の成績上位の学生に、授業料を給付するところや
給付型の奨学金を、設けるところも増えているそうよ。
まだ受験までには、時間があるから、
自分でも色々、調べてみなさい。
しっかり考えて、自分の進路を決めなさい。」
大学生活では、勉学はもとより、
様々な、その時しか出来ないことを、
体験してほしいもの。
金銭面でギリギリの大学生活で、
アルバイト漬けでは、もったいない。
18歳の子には、重い現実かもしれないけれど、
メリット・デメリットを、
しっかり知った上であれば、
貸与型の奨学金の利用も、選択肢として考えても
良いのかもしれない。
その時は奨学金を、借金ではなく、
将来の自分への投資と思えるような
使い方をしてもらえれば、いいなと思いました。
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